僕がチンハッタンでPUAになった日(出会い~連れ出し編)
〈序章〉
「Ok,everyone. It is time to finish. Thank you for gathering today’s meeting! Have a nice weekend!」
金曜の夕方、自宅にて。私はモニター越しにメンバーに挨拶する。
今日は得意先とのリモート会議。司会を任された私は、慣れない英語で挨拶を済ましモニターを切った。
ヤニキ(以下、ヤニ)「今日の受注、どう折り合いつけるんやろ、あ~ってかそもそも英語わかんね。こら来週Bossに相談やな。」
得意先からの無茶ぶりに独り言ちつつ、とりあえず急場しのぎした安堵感もあってか、私はグッと背伸びをして首を鳴らした。窓の外を見る。
時刻は夕方の18時。初夏の匂いが漂う週末のチンハッタンは、華金を楽しもうとする人々で賑わっていた。
ヤニ「もう仕事終わりぃ!んじゃ、まぁ、、、始めますかぁ、、、」
私は急いで服を脱ぎ捨てシャワーを浴びた。これから「お散歩」の準備だ。
シャワーを済ませ、カジュアル目の襟付きシャツ・黒スキニーに着替え、小さめのセカンドバックを小脇に抱え、香水を2プッシュしてから自宅を後にする。
一年前ほど前。
私は、ひょんなことからア●ル大王と出会ったことがきっかけで、長年活動していた単独野生からナンパ界隈入りし、大王率いるパンダ軍団から「ストのイロハ」を叩き込まれることになった。
『ア●ル大王。言わずもがなの某所のナンパ帝王。強烈なノンバ・ズバズバと指摘するスタイルに圧倒されがちだが、実は初心者の面倒見が良いイケオジだ。』
そのお話はまたの機会に。
そこから色々あり、今はチンハッタン(Chinhattan)という場所で仕事をしている。
現在は仕事と自己研鑽で時間が取れないので、一日30分、週末は2時間と片手間に「お散歩」、つまりはナンパ活動に勤しんでいる。
私は、いつもの様に、地下鉄でチンムズスクエアに向かい、その周辺で活動を始めた。
10数声ほど丁寧に声を掛ける。国民性なのか、ややオープンはするものの、いつも相手は物珍しい目で私を見て終わる。
日本に比べて、この国では色々と勝手が違うようだ。
ヤニ「くそー。これじゃあ、只のおもしろアジア人やんけ。何か対策しないと。地道に外見を寄せて、試行回数上げるしかないか。。。」
ナンパは、片手間で出来るほど甘くはない。
私は今だチンハッタンで坊主という結果に甘んじていた。
こちらへ来て●カ月。やはり日本との違いに戸惑いを感じている。
日本のスト仲間からもエールをもらってはいるが、なかなか上手くいかず。
比べてはいけないと思いつつも、Twitterで皆の即報を見て少し力が入っていた。
その後のストも鳴かず飛ばず。少々気が滅入りながら、私はケジメの一声を考え始めていた。
ヤニ「今日も坊主だお。次だめなら、ホットドッグでも食うCar」
私の思いとは裏腹に、初夏のチンハッタンは、夜の8時を過ぎても明るく、より一層喧噪が激しく熱気を帯びていた。
早々とワクチン接種を済ませた乳陽Carは、ほとんどがノーマスクで、Covidの影響もどこ吹く風だ。
そんな中、ふと道端に目をやると、ある雑貨屋の前でスマホをいじる女の子が目に止まった。
身長150cm中ば位、金髪色白、コケティッシュな顔立ちのアメリカンガールだ。
女性の平均身長が165cmを超すこの国で、バチバチのカットクリースメイクが流行るこの国で、彼女はとても可愛らしい存在に感じられた。見た目は20歳前半だろうか。
服装は、水色を基調とした可愛いらしいフリルのついたブラウスで、日本でいう「Girly感」が高めな子だ。一方で、欧米人特有のホリの深さもあり、美人要素も十二分にある。
全然アリだ。いや寧ろ、今まで自分が見たチンハッタン案件では、かなり可愛い。
顔の系統はこんな感じ。もう少しナチュラルメークで幼くしたイメージ。
私は人の流れに乗って、自然な感じで彼女に近づいた。
正面右斜め45度から1.5m位離れて、彼女の前に立つ。すると、彼女がふとスマホから目を離し、私と目が合った。
瞬間、私は「あっ、もしかして!」という表情をして、おどけた感じで両手を前に広げる。
すると彼女も「ん?どした?」いう顔でこちらを見た。
そこで私はすかさず、この一言を言い放つ。
ヤニ「Hi! Am... Are you Instagram Queen? ! Right? (わわわ!もしかしてインスタグラムクイーンさんですか?!うれち!うれち!)」
これは、私が対チンハッタン用に考案した新オープナー、名付けてIGQ(Instagram Queen)オープナーである。
この時の表情は決して真顔ではなく、南阿佐ヶ谷あたりの飲み屋で、じゃない方の芸人を見かけた時位のテンションは欲しい。
・・・
・・・
・・・
パツ金子「・・・Hahaha. No.なんでw?」
ヤニ「いや、そこで見かけて、立ち方が奇麗でインスタグラマーっぽいからさ。」
パツ金子「Oh, Thank you!そんなにインスタグラマーっぽい?」
ヤニ「Yeah, まさにIG Queenだね。フォロワー15人は堅いでしょ?」
パツ金子「Only?それ少ないよ!Haha. It‘s so funny. Ahahahaha!!」
ヤニ「Haha. Just kidding!」
「爆」オープンしてるやんけ。
このオープナーは、牛タンのナンパマシーンことK氏のキャスで聞いた「肌白すぎない?前世は雪肌精?」「歩き方奇麗でめっちゃ気になった」オープナーからヒントを得たもの。
直接容姿を褒めず、誰もが知っている美白の象徴・仕草で間接的に相手を褒め、かつ笑いを取るというテクニックだ。その後、「フォロワー15人くらい」の下りの追いボケで、相手からの突っ込みを引き出す。
『K氏。筆者が牛タン遠征時に快く合流してくれた好青年。その爽やかな出で立ちとは裏腹に、彼のナンパ活動は非常にストイックだ。その証拠に、合流して約10分後には、彼はターゲットを求めいずこかに消えていった。』
パツ金子「It’s Joking?! haha!」
オープンしたので、「ここで誘惑!!」とはならず。先ずは自己開示から。
ヤニ「俺、最近日本から来てさ、大事なビジネスでこっちに用があって。すぐ近くの◇◇(地名)に住んでるんだけど。」
Risa「Oh~Japan!Yes.」
ヤニ「右も左も分からず散歩してたんだ。そしたらIG Queenがいたから思わず声かけちゃったw」
Risa「Haha.そうだったんだ。」
ヤニ「ってか日本馴染みある?」
Risa「私日本の兄目が大好きだよ。」
?!
ヤニ「マジで?!じゃあ○〇(作品名)とか○×(作品名)とか好き?」
Risa「好きー!▲▲(キャラ)超Coolだよねw」
ヤニ「分かってるね~ww」
はい、来ましたよこのパターンが。
女神案件キターーーーーー(゜∀゜)ーーーーーー!!
(電車男世代)
どうやらストの神様は私に微笑んでくれているようだ。
ボロクソ状態からの女神案件登場。これがあるからストはやめられない。
ここで慌ててはいけない。先ずワチャワチャしつつ、連れ出しもあくまで自然に。
みんな大好き「僕愛の時間制限メソッド」を使いつつ、連れ出しの理由付けをする。
ヤニ「俺、ヤニキっていうんだ。君は?」
Risa「Risaよ。」
ヤニ「Nice to meet you! Risaは友達と夕飯?」
Risa「ううん、今から何するか考えてたw」
ヤニ「(おけ。夜の予定無しやな。)ああ、何かめっちゃスマホ見てたもんなw
絶対Marcy'sの夏セール調べてたでしょ。来週の争奪戦に向けて。」
Risa「Hahaha.良く知ってるね。」
ヤニ「俺もさ、今日友達とメシの約束してたんだけど、彼、少し仕事で遅れそうなんだよね。」
Risa「Yeah.」
ヤニ「どう待ち時間過ごすか困ってたんだ。」
Risa「それは微妙だね。どれくらい?」
ヤニ「そんな一時間もかかるとは思わないけどね。ってか時間つぶしで、一杯だけ付き合ってよ。○〇(作品名)の裏話教えたげるww」
Risa「いいよ!聞きたい!」
ヤニ「Sure!今ちょっと時間遅めだけど、郊外の人?俺、すぐ近所だからAvailableだけど。」
Risa「私家が××(地名)だからすぐ帰れるよ。友達との約束は大丈夫?」
ヤニ「いけたら連絡してって言ってるから大丈夫。」
Risa「OK!」
連れ出し確定。
オープンから連れ出しまでの和みは、ヤギ氏のトークを参考にしている。
案件と楽しく会話しながら、しれっと連れ出し、いつの間にか飲み物片手に案件と公園で和んでいるイメージだ。
『ヤギ氏。ヤギ一味のボス。彼は、とにかく楽しそうに声を掛ける。話す内容・笑い声も軽妙で、相手も思わず釣られて笑ってしまいそうになる。彼の連れ出しキャスは、スト師なら必聴。』
5分ほど、二人で談笑しながらバーを探す。Risaは、テンション高くノリが良い子だ。
近くにルーフトップバーがあるのは知っていたが、敢えて言わなかった。
状況を分析をしてみる。
現在地→私の家→相手の家の順に位置関係があり、相手の食いつきは比較的高め。この状況を利用しない手はない。パレ近くの飲み屋を提案してみよう。
通らなかったら、しれっと知ってるバーに連れて行けばよい。
ヤニ「ここら辺バーないね~。つーか、同僚と◇◇(地名。パレ近所)でメシ食うから、そこなら飲み屋もあるかも!Risaん家が××(地名)だったら帰り近くなるでしょ?とりま、そこで探さない?」
Risa「・・・OK!そうだね。」
マイタウンからのパレス導線に乗せる理由付けは、ミタライ氏、nico氏を参考にしている。彼らは、繁華街からマイタウンへの持っていき方が上手い。
相手の状況に応じて上手く理由をつけて、自然な感じでパレス近くの導線に乗せる。
ミタちゃんはコンビで、nicoちゃんは路上・キャスで、そのテクを何度か見聞きした。
『ミタライ氏。最近は、道聞きナンパを主に講習を展開しているが、ゴリゴリのストロングスタイル。ひとたび案件と対峙するれば、あたおかエピソードを織り交ぜながら、案件の関心を上げていくエピソードモンスター。』
『nico氏。The Last PUA。男女問わずいつの間にか相手の懐に入っていく。どんな相手にも物怖じしない態度で接するが、何故か憎めない人。何度か合流させて頂いたが、女の子とわずか十数秒で和み、手つなぎ連れ出しをしているシーンは圧巻だった。』
兎にも角にも、導線乗せ成功。Uberで車を拾い、近所の行きつけのレストランバーを指定。二人で車に乗り込む。
ヤニ「この週末はどっか行かないの?今夏休みシーズンじゃん。」
Risa「ううん、週末は特に予定無くて。けど、、、今日は30分位で帰るかも。」
ヤニ「(OK。ってことは、おもんなかったら30分で足切り判断あるな。)OKおもんなかったら2分で帰ろうw」
Risa「ww」
何気ない会話の中で彼女の予定を聞き出し、即るまでの行程を逆算。
和み・搬送・ギラ・即までの順序とトークラインナップを準備する。
<ヤニキの脳内>
※今までのトークの中で、それとなく下記ポイントは確認済み。会話の中でいくつか下線引いたから、そこ読み返してみてちょ。
【スケジュール】
- 本日の予定無し:OK
- 明日の予定無し:OK
【立地・導線】
- 抑えるべき導線:下調べ済み。次の目標はパレ搬
- 相手家までの距離:近い。家遠いグダなし
【トーク展開】
- 30分位で足切り判断あり。相手はノリが良いので、最初はアクセル強めで盛り上げる
- 足切り超えたら、1時間強以内に必要なトークポイントを抑える
- 時間帯は遅めなので、無駄な間延びによる「時間切れグダ」は要注意
- 構成は、兄目から日本文化、からの過去恋愛話で広げて、あとは反応見て、ワンナイスタンス・パレ搬の理由付け考えるか。。。
界隈入りしてから一年で、準即アポを60件程度こなしていたので、即までの段取り・逆算は自然と出来るようになっていた。
逆算の重要性は、数々の凄腕がtweet・スペースで説明しており言わずもがなだ。
常に即を意識した考え方をしちゃうのは、しょうがないよね。だってスト師なんだもの。
けど、こちらの思惑が少しでも伝わった瞬間、相手にキモイマン認定されるので、要注意。
店について、とりあえず、向かい掛けのテーブルに座り、ワインで乾杯。
ヤニ&Risa「Cheer~!!」
フリートーク開始。お見合いの様な、自己紹介~、ご趣味は~、なんてしない。
ヤニ「で、この兄目ってさ~×××」
Risa「え~そうなの?!」
ちょくちょく自己開示混ぜつつ、フリートーク。
ヤニ「Covid終わったら、日本でどっか行きたいとこある??」
Risa「え~っとね~!あ、あそこ行ってみたい!」
ヤニ「いいよね、その場所●があってクソおもろいよw俺▲出身だから近い!」
Risa「めっちゃ楽しみ~、えっ▲出身?そこもいいよね!」
ヤニ「(スマホ共有しながら)兄目好きなら、この場所知ってる??」
Risa「知ってる!○〇(作品名)の聖地でしょ!」
ヤニ「すごいわ~!(日本語)。Risaは日本好きなんだね。いや~普通に嬉しいわ!」
Risa「Sugoiwa~」
ヤニ「You are speaking Japanese?! Wow genius!」
ヤニ&Risa「Hahaha!」
いい感じ。
軽く恋愛の話しつつ、フリートーク。
ヤニ「えっ?!デート中で脈なかったらすぐスマホいじっちゃうの?!アメリカ人怖!!」
Risa「アメリカ人はシビアかもw」
ヤニ「違うな。それは Risaがでしょ。絶対男振り回すタイプだw」
Risa「HAHAHA!違う違うw」
ヤニ「嘘つけ、絶対Sweet Devil(小悪魔)やわww」
Risa「どういうこと?!HAHAHA!」
ヤニ「気にならない人には冷たいけど、好きになったらとことん態度変えるでしょ!」
そんなんあたりまえやんけ、と心の中で突っ込む。
Risa「ああ、けどそうかもしれない!この前男友達から、誕生日にプレゼントと告白受けたけど、プレゼントだけもらって断ったw」
ヤニ「Really?!小悪魔やばっ!そろそろ帰ろかなw」
Risa「No. Haha」
ヤニ「けど、逆のパターンで俺も似た経験あるけど。」
Risa「え、どんな?」
ラリーされる、テンション高めなトーク。
即るのもそうだが、結構この時間が好きでストをしているのかもしれない。
このような雑談でも、コールドなんちゃら・距離感テスト・ネグ・軽い決めつけ・マウンティング、そんなお決まりのルーティンが頭をよぎってしまうあなたは、完全に職業病である。
私は、昔からナンパブログを参考にして、こういったクラシカルなルーティンをちょくちょくと試すのが好きだった。
最近だと、どういったルーティンを取れば、即に近づけるかではなく、まず、その先にどう二人が楽しめる雰囲気を作るか、ということを意識している。
改めて文章に落としてみると、私のトークは大したことはない。
しかし、この時の会話には、間違いなく楽しさ・まだ知らぬ相手へのワクワク感は確実にあったと思う。
また、今夜は、自分より彼女に少しでもこの時間を楽しんでもらいたい。という気持ちの方が強かった。
ちなみに、文章に書くと今までのやり取りはスムーズに見えるが、この時の私は、結構トチった英語を話していた。すっっっっごく!たどたどしい感じで。
彼女も何度か「??・・・Sorry??」という感じで、私の英語を聞き直していた。
理想はこう。
現実はこう。である。
ネイティブには相当ストレスフルなはずだ。
それでもここまで話を聞いてくれる子は、楽しませなきゃ国際問題になってしまう!
ここら辺は、らいむ氏から学んだマインドだ。
『らいむ氏。平日限定PUA。彼とコンビをすると、彼は案件だけではなく、コンビ相手も巻き込んで楽しい空気感を作る。しかし、毎回、即までのコミットは凄まじく、帰宅時間含めたタイムマネジメントは鬼である。』
約束の30分は疾うに過ぎていた。けど、足切りはない。
幸い彼女は楽しんでくれているようだ。終始笑いは絶えなかったと思う。
ヤニ「(携帯見て)あ~友達、仕事で捕まったわ。完全に来れねーって。」
Risa「Okie?」
ヤニ「It’s OK.ってか、Risaの元彼ってどんな人?」
Risa「えっとね~。」
うし、続けてええんやな。食いつき・テンションも高い、はず。
じゃあ、こっからは、レジェンドの技を借りますか。
カイザー、技を借りるぜぇ。
『チンハッタンナンパ大戦争』開始じゃい。日本で学んだこと全てぶつけちゃる。
っと、今日のお話はここまで。